実家を相続したものの、特に困ったことも起きていないから、と空き家のまま放置している方は少なくありません。
しかし「今のところ問題がない」ことと「リスクがない」ことは同じではありません。空き家を放置する期間が長くなるほど、税金の負担が増えたり、建物の劣化が進んだり、近隣とのトラブルに発展したりする可能性が高まっていきます。
この記事では、実家を空き家のまま放置することで生じる具体的なリスクを整理しました。対応の優先度を考える材料としてご活用ください。
「今は何も起きていないから大丈夫」は誤解です
空き家を所有していても、今のところ近隣からの苦情も行政からの通知も来ていない、という状態であれば、「特に問題はない」と感じてしまうのは自然なことです。
しかし、空き家に関するリスクの多くは、時間の経過とともに静かに進行していくという特徴があります。建物の劣化は目に見えて分かるものばかりではなく、雨漏りやシロアリの被害のように、外からは気づきにくい形で進んでいることもあります。
また、税制上の優遇が受けられなくなるといった制度上のリスクも、実際に通知が届くまで気づきにくいものです。
「何も起きていない」のではなく「まだ表面化していないだけ」という可能性を踏まえておきましょう。
放置によって生じる税金・法的リスク
まずは、空き家の放置によって生じる税金や制度上のリスクから見ていきます。
「特定空き家」に指定されると固定資産税が上がる
倒壊の危険や衛生上の問題があるなど、周囲への悪影響が大きいと判断されると、自治体から「特定空き家」に指定されることがあります。
指定後も改善が見られず勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減特例が外れ、税額が実質的に最大6倍になる可能性があります。
2023年の法改正では、特定空き家に至る前の「管理不全空き家」の段階でも同様のリスクが生じるようになっており、放置期間が長いほど対象になりやすいです。
相続登記をしないまま放置すると過料の対象になる
2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に名義変更をしないと、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
名義変更をしないまま放置していると、いざ売却や活用をしようとしたときに、その前提となる登記手続きから始めなければならず、余計な時間と手間がかかることになります。
過去に発生した相続分についても、2027年3月31日までに登記を済ませましょう。
管理責任を問われ、損害賠償の対象になることもある
空き家の外壁が崩れて通行人にけがをさせた、屋根材が飛んで隣家を傷つけたといった事故が起きた場合、所有者は民法上の「工作物責任」を問われ、損害賠償を求められる可能性があります。
名義変更が済んでいなくても、実質的な所有者・管理者としての責任が問われることがあるため、「まだ自分名義になっていないから関係ない」とは言い切れません。
適切な管理を怠ったことが原因の事故は、所有者の責任として扱われるのが原則です。
放置によって生じる建物・近隣リスク
税金や法律面だけでなく、建物そのものや近隣との関係においても、放置によるリスクが生じます。
建物の劣化が進み、資産価値がさらに下がる
人が住まなくなった家は、換気や通水が行われなくなることで、居住中の家より劣化のスピードが早まる傾向があります。
具体的には、湿気がこもりやすくなることでカビや腐食が進行し、シロアリの被害を受けやすくなることもあります。
劣化が進むほど、将来的に売却や活用を考えたときの資産価値は下がっていき、修繕やリフォームにかかる費用もかさんでいくのです。
雑草や害虫の発生で近隣とのトラブルに発展する
放置された空き家の敷地では、雑草が生い茂ったり、害虫やねずみが発生したりすることがあります。
これらが隣接する住宅にまで広がると、近隣住民からの苦情や、自治体への通報につながるケースも少なくありません。
近隣トラブルは、その後の関係修復に時間がかかることも多く、結果的に自治体からの指導・勧告に発展する入り口にもなり得ます。
不審者の侵入や放火などの防犯上のリスクが高まる
人の出入りがない空き家は、不審者が侵入しやすい、あるいは放火のターゲットになりやすいという防犯上のリスクも抱えています。
総務省消防庁の統計でも、放火は出火原因の上位に挙げられており、空き家は特に発見が遅れやすいため被害が拡大しやすい傾向があります。
防犯面のリスクは、所有者自身だけでなく近隣住民の安全にも関わる問題であるため、早めに対策をするようにしましょう。
リスクを避けるための現実的な対策
放置によるリスクを踏まえたうえで、実際にどのような対策ができるのかを整理します。
まずは相続登記と現状の把握から始める
放置リスクへの対策の第一歩は、相続登記を済ませ、名義を明確にしておくことです。
そのうえで、実際に現地を訪れて建物の状態を確認し、どの程度の劣化が進んでいるかを把握します。
遠方に住んでいて頻繁に訪れるのが難しい場合は、空き家管理サービスを利用し、定期的な巡回や報告を受けられるようにしておくと安心です。
活用・賃貸・売却など、次の方針を早めに検討する
放置期間が長引くほど、リスクは積み重なっていきます。
自分で住む予定がないのであれば、賃貸に出す、空き家バンクに登録する、あるいは売却するといった、次の方針を早い段階で検討しておくことが望ましいです。
方針が定まらない場合でも、まずは複数の不動産会社に相談し、選択肢ごとの見通しを確認するところから始めることができます。
火災保険の契約内容を空き家用に見直す
人が住んでいる前提の「住宅用」の火災保険契約のままにしていると、空き家であることの告知義務違反にあたり、いざというときに保険金が支払われない可能性があります。
空き家になった時点で保険会社に連絡し、「空き家用」の契約への切り替えが必要かどうかを確認しておくことも、放置によるリスクに備えるための重要な対策のひとつです。
まとめ
実家を空き家のまま放置すると、特定空き家指定による固定資産税の増額や相続登記の過料といった税金・法的リスクに加え、建物の劣化、近隣トラブル、防犯上のリスクなど、さまざまな問題が時間の経過とともに積み重なっていきます。
「今は何も起きていないから大丈夫」と感じていても、多くのリスクは表面化するまで気づきにくいという特徴があります。
まずは相続登記と現状把握から始め、賃貸・空き家バンク・売却といった次の方針を早めに検討することが、リスクを最小限に抑えるための現実的な対策です。
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